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起業への思い


なぜ、この仕事を始めようと思ったか——

私がいろんな方にお会いする中で、必ず聞かれる質問です。事業内容でもなく、サービス紹介でもなく、起業の動機。そもそもの始まりを、本音で書きたいと思います。

私がまだ大学在学中の時のこと、まだ社会の右も左も分からなかったときに、縁あって創業期のサイバーエージェントに就職することができました。

当時はとにかく認められたくて、目の前のことをひたすらがむしゃらにこなす毎日。楽しい仲間たちと一丸となって、手作りで会社を大きくしていくのは、とてもやりがいがありました。また月を追う毎に、夢のように数字も組織も大きくなって行く様子を間近で体験することで、仕事に対する手ごたえと充実感を感じていました。

そんな中、夫がMBAの取得のために渡米することになりました。そこで、会社を辞めて自分も渡米するか、日本に残り別居生活を送るかの選択を迫られることになったのです。悩んだ末、仕事への未練と責任感から会社を辞めることはできず、東京に残ることにしました。1年間別居生活を送り東京で仕事をしていましたが、やはり夫婦一緒での生活がしたいと思い、2005年に会社を辞め、渡米することにしました。

夫の留学を理由に会社を辞めたものの、異国で主婦、子供なし、という状況は、私にとってとても退屈なものでした。これまでの生活とは一変して、時間がありあまる生活を送る中で、「私は何のために生きているのか」「自分の時間やパワーをどこに向けて生きていくべきか」を真剣に考えざるを得なくなりました。生きる意味を考えることより、目の前にある山のような課題をひとつひとつ潰して達成感を味わって生きる方が楽なものです。私はそれまで、生きる意味や働く意味など、人間として考えるべきことを、忙しさを免罪符に、考えるのを避けて生きてきました。しかし、「何のために生きているのか」という普遍的な問題を直視し、答えを見出せない生活は、精神的にとても苦しいものでした。

そんなどうしようもない思いと暇な時間を紛らわせるため、夫のビジネススクールでの授業を聴講してみました。すると、そこに「自分が世界を変える」と真顔で言っている人たちがいたのです。世界レベルで物事を考えている人たちを間近で見ることは、私にとって衝撃でした。また、私なんかには到底ついていけない雲の上の世界だと思っていたビジネススクールの授業が、案外理解できることに自分自身で驚き、「もしかしたら、私にもできるんじゃないだろうか」と思えるようになってきたのです。

それは、自分が賢いとか特別だとかいうことではなく、自分だってチャレンジできるはずなのに、そして、精一杯チャレンジすれば、私でも何かを成し遂げることが出来るのに、なぜそれをしないんだろう、という思いです。これまでの私は、可能性や限界を自分自身で勝手に決めて、ブレーキをかけてたんじゃないかということに気づいたのでした。

そこで何をするべきかを考えた時、「一度きりの人生、社会のためになることをやる。それも一回限りじゃなくて死ぬまでやる」という気持ちになりました。そして、「どうせやるなら、人のためになることに自分のパワーをトコトン注ごう」と、今のビジネスを起業するに至ったのです。こんな思いで起業し、仕事をしています。どうぞご支援いただければ幸いです。

2007年4月
株式会社トランスボーダーズ
代表取締役社長 田中佐紀子
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